患者様は昭和10年生まれの男性です。 平成14年(2002年)7月に右下腹部の痛みと同部位の腫瘍(手拳大)と右下肢の浮腫が出現したため、
癌専門病院を受診し手術目的で入院しました。 腫瘤は腸腰筋への浸潤が大きく大出血の危険性があるため断念されたため、
組織所見は得られていないのですが、臨床的には悪性との診断だったため、
放射線照射20回と抗癌剤(アドリアマイシン+イホマイド+パラプラチン)の併用投与が開始されました。 患者様は67歳の平成14年8月に新免疫療法を希望し来院され治療を開始しました。 初診時の超音波検査では、右下腹部に13.8×10.5×8.7cm大の多房性の内部不均一のエコー所見が認められ、
血流は極めて豊富で右腸腰筋に浸潤しており、超音波上
後腹膜肉腫として矛盾がない所見を呈しておりました。(図2-1) 腫瘍マーカーはICTPのみが8.6ng/ml(基準値:4.5ng/ml)と異常値を示し、それ以外の13項目がいずれも基準値を示していました。 免疫能力は初回のTh1サイトカイン検査でIL-12は活性化が認められたものの、それ以後の放射線及び抗癌剤の投与による免疫抑制のためか、平成16年7月まで低い値を示していました。 また、NK細胞は低値で推移していましたが、NKT細胞比率と活性化NKT細胞比率は高い値を示し続けました。 新免疫療法開始後、4ヶ月後の平成14年12月の超音波では
充実性部分の大きさは変化がなく腫瘤の血流は減少しましたが、液状化部分の増大が確認され腫瘤の大きさは17×13.3×10.6cmと増大しました。(図2-2) また、腫瘍マーカーのICTPは10.6ng/mlと増加傾向を示しました。この事から、治療効果が見られないと判断し、分子標的治療薬のグリベック400mg/日の投与を併用しました。 グリベック服用1ヶ月目に右下腹部の腫瘤は触診上縮小傾向を示し柔軟性が認められました。 平成15年5月の超音波検査では大きさが12.3×10.4×9.4cm(図2-3)まで縮小し、充実性部分はごく一部のみで薄い壁を持つ『のう腫』の形態を示していました。 この時のICTPは6.1ng/mlまで低下しております。 新免疫療法とグリベックとの併用に有効性が示唆されました。 これ以後、グリベック400mg/日の隔日投与としました。 そして2ヵ月後の平成15年7月には200mg/日の隔日投与に減量しました。
平成15年10月には腫瘍は12.1×9.8×8.5cmまで縮小し充実性部分は右後壁に見られるのみとなりました。(図2-4) その後、平成15年12月からは200mgを3日に1回の投与までさらに減量し、
平成16年5月にグリベックは終了となりました。 平成16年6月にはICTPが初めて3.4と基準値内に入り、それ以後異常値を示しておりません。 グリベックは平滑筋肉腫(Cキット陽性細胞)に有効性が認められることから、
グリベックが効果を示したこの患者様は、組織系は取れていませんが、平滑筋肉腫であることが強く疑われると考えます。 平成17年12月、新免疫療法も減量し、平成18年1月(新免疫療法開始から約3年5か月後)の超音波検査では充実性部分がほぼ消失し液状化部分がほとんどと診断されました(図2-5)。 この結果を受け、患者様と相談したところ、腫瘤は残存するものの新免疫療法の治療も終了することとなりました。 平成19年12月現在、癌専門病院で半年に1回の画像検査でフォローアップが行われております。
患者様は昭和10年生まれの男性です。
平成14年(2002年)7月に右下腹部の痛みと同部位の腫瘍(手拳大)と右下肢の浮腫が出現したため、
癌専門病院を受診し手術目的で入院しました。
腫瘤は腸腰筋への浸潤が大きく大出血の危険性があるため断念されたため、
組織所見は得られていないのですが、臨床的には悪性との診断だったため、
放射線照射20回と抗癌剤(アドリアマイシン+イホマイド+パラプラチン)の併用投与が開始されました。
患者様は67歳の平成14年8月に新免疫療法を希望し来院され治療を開始しました。
初診時の超音波検査では、右下腹部に13.8×10.5×8.7cm大の多房性の内部不均一のエコー所見が認められ、
血流は極めて豊富で右腸腰筋に浸潤しており、超音波上
後腹膜肉腫として矛盾がない所見を呈しておりました。(図2-1)
腫瘍マーカーはICTPのみが8.6ng/ml(基準値:4.5ng/ml)と異常値を示し、それ以外の13項目がいずれも基準値を示していました。
免疫能力は初回のTh1サイトカイン検査でIL-12は活性化が認められたものの、それ以後の放射線及び抗癌剤の投与による免疫抑制のためか、平成16年7月まで低い値を示していました。
また、NK細胞は低値で推移していましたが、NKT細胞比率と活性化NKT細胞比率は高い値を示し続けました。
新免疫療法開始後、4ヶ月後の平成14年12月の超音波では
充実性部分の大きさは変化がなく腫瘤の血流は減少しましたが、液状化部分の増大が確認され腫瘤の大きさは17×13.3×10.6cmと増大しました。(図2-2)
また、腫瘍マーカーのICTPは10.6ng/mlと増加傾向を示しました。この事から、治療効果が見られないと判断し、分子標的治療薬のグリベック400mg/日の投与を併用しました。
グリベック服用1ヶ月目に右下腹部の腫瘤は触診上縮小傾向を示し柔軟性が認められました。
平成15年5月の超音波検査では大きさが12.3×10.4×9.4cm(図2-3)まで縮小し、充実性部分はごく一部のみで薄い壁を持つ『のう腫』の形態を示していました。
この時のICTPは6.1ng/mlまで低下しております。
新免疫療法とグリベックとの併用に有効性が示唆されました。
これ以後、グリベック400mg/日の隔日投与としました。
そして2ヵ月後の平成15年7月には200mg/日の隔日投与に減量しました。
平成15年10月には腫瘍は12.1×9.8×8.5cmまで縮小し充実性部分は右後壁に見られるのみとなりました。(図2-4)
その後、平成15年12月からは200mgを3日に1回の投与までさらに減量し、
平成16年5月にグリベックは終了となりました。
平成16年6月にはICTPが初めて3.4と基準値内に入り、それ以後異常値を示しておりません。
グリベックは平滑筋肉腫(Cキット陽性細胞)に有効性が認められることから、
グリベックが効果を示したこの患者様は、組織系は取れていませんが、平滑筋肉腫であることが強く疑われると考えます。
平成17年12月、新免疫療法も減量し、平成18年1月(新免疫療法開始から約3年5か月後)の超音波検査では充実性部分がほぼ消失し液状化部分がほとんどと診断されました(図2-5)。
この結果を受け、患者様と相談したところ、腫瘤は残存するものの新免疫療法の治療も終了することとなりました。
平成19年12月現在、癌専門病院で半年に1回の画像検査でフォローアップが行われております。