患者様は神奈川県在住の女性です。
2014年(平成26年)10月頃に風邪のような症状があり、大学病院にて精査したところ中咽頭癌(扁平上皮癌)のStageⅢ(ステージ3)と診断を受けました。
同年12月に総合病院にてサイバーナイフを全14回(中咽頭に7回、リンパ節に7回)受けながら、抗癌剤アービタックスが行われました。
2015年(平成27年)01月中旬の当院初診時、患者様は今後行われる標準療法(抗癌剤やサイバーナイフ)に新免疫療法(NITC)を併用したいとのことでした。
直ちに新免疫療法(NITC)を開始しました。
この時の免疫検査のサイトカインの値は(図1-2)、IFNγが8.6 IU/ml(10以上が良好)、IL-12が7.8 pg/ml以下(7.8以上が良好)となっていたことから、免疫力が低下した状態だったと考えられます。
また腫瘍マーカーはCa19-9が51.5 U/ml(基準値37.0以下)、シリアルLEX-I抗原が42 U/ml(基準値38以下)と異常値を示していました(図1-1)。
2015年1月下旬(当院治療開始から0.4か月後)、総合病院でCT検査を行いました(図2-1)。
当院の読影では咽頭は右前方に肥厚があること、左鎖骨上リンパ節転移17 mmを指摘しました。
同年02月初旬、患者様は、新免疫療法(NITC)を開始して体調が良くなったと感じられたこと。
また、周りにいる人から見違えるくらい変わったと言われたと仰っておりました。
また、これまでに受けた抗癌剤の副作用が酷かったことから、抗癌剤に対する恐怖心はあるとのことでした。
同時期に行われた超音波検査専門医の所見は、右鎖骨上窩リンパ節転移が三か所(14×13×9 mm、13×10×6 mm、5×4 mm)で、いずれもリンパ門は消失しており、血流は辺縁から流入している。流速は遅く治療後と考えられる。また、右顎下腺腫大、甲状腺の厚みが増しているおり、これらも治療の影響の可能性もあるとの診断でした。
主治医のもとで併用される抗癌剤は、シスプラチン+5FUを3回行い、その後、TS-1を1年間続けるという計画になりました。
2015年(平成27年)03月にMRI検査が行われました。患者様は主治医より画像上腫瘍は消失したと説明されました(図2-2)。
当院の読影では、咽頭の肥厚は改善されているが、一部濃度上昇部位は残っている。瘢痕の可能性もあるが注意が必要と判断しました。
なお、左鎖骨上リンパ節は指摘できないが濃度上昇はあると判断しました。
シスプラチン+5FUの副作用が大きかったこと、MRI検査にて改善したことから、併用する抗癌剤はTS-1:100 mg(2週間投与・1週間休み)となりました。
2015年(平成27年)05月のPET-CT検査にて主治医から、再発や転移は無いと説明を受けたと、患者様より報告を受けました。
この結果を受けて抗癌剤TS-1は2週間投与・2週間休みに変更されました。同年06月TS-1の副作用でGOT、GPTが上昇し肝臓機能の悪化が示唆されたことから、7月よりTS-1は80mgに減量されました。
2015年07月下旬(新免疫療法開始から6.2か月後)に総合病院にてMRI検査が行われました。患者様は主治医より、主病変の再発の有無は判断できないと説明を受けたとのことでした。
一方、当院の読影では咽頭部の腫瘍は指摘できないが、右側に肥厚部分が残っている。この肥厚部は放射線(サイバーナイフ)の影響の可能性があると判断しました(図2-3)。
2015年09月当院の血液検査にて、腫瘍マーカーのCa19-9が33.8 U/ml(基準値37.0以下)と初めて基準値を下回りました(図1-1)。
また、免疫検査のサイトカインの値は図1-2に示すように良好な経過を示しております。
2015年11月末、総合病院でCT検査が行われ、主治医から再発はなしと説明を受けたと、患者様より報告を受けました。
そして、新免疫療法の処方を段階的に減らしていきました。
総合病院での2016年08月末のMRIで問題なし、11月のMRIでも変化なしと診断されました。今後は、主治医のもとでMRIを半年に1回、PET検査は年1回で経過観察することになりました。
そして、2016年12月(初診から約1年11か月後)の診察を最後に、患者様のご判断で新免疫療法を終了することになりました。
患者様は、ご自身で免疫力を上げるために、様々なことを工夫しながら可能な限りストレスを貯めないように心がけ、ダンスなどの有酸素運動を行い、海外旅行や絵画などの趣味を楽しみながら闘病されております。