【症例報告】 新免疫療法による がん免疫療法

脳腫瘍 HCG産生脳腫瘍 (胚細胞腫瘍) 3度目の再発時に当院治療開始

放射線併用

患者様は昭和63年生まれの男性で大学病院での生検で平成15年(2003年)2月に頭蓋内胚細胞腫瘍の診断を受け、平成19(2007年)年4月に新免疫療法を希望されて来院された、東京都在住の18歳の男性です。

この患者様の病歴は長い経過を経ていました。
患者様は平成15年2月に尿崩症を発症し都内の大学病院で頭蓋内胚細胞腫瘍(松果体部と鞍部上部)と診断されました。


【診断時の治療内容】
平成15年6月にICEを3クールと放射線治療を受け寛解となりました。

【再発時】
平成16年12月に左側脳室前角に再発。平成17年1月に再び抗癌剤のICEを3クールと放射線を受けました。

【再再発時の治療内容】
平成18年1月、血液中、髄液中のHCGが上昇。
同年4月に視交叉後方に10mmの病変を確認。
同年5月ICE療法を行い、8月に末梢血肝細胞移植、9月に超大量化学療法(サイクロフォスファミド3250mg、カルボプラチン480mg、エトポシド330mg)を2回受けて寛解となりました。

【3度目の再発】
平成19年1月にはHCGが9.9mIU/ml(基準値0.7mIU/ml以下)、3月には170.8mIU/ml、4月には368.6IU/mlと上昇した為に脳腫瘍(胚細胞腫瘍)の3度目の再発が示唆され、5月に放射線を30Gry受けております。また脳圧を減じるために脳室腹膜bypassを受けています。


平成19年4月、当院初診時の胚細胞の腫瘍マーカーHCGは250mIU/ml(基準値0.7mIU/ml以下)、HCGβは3.4ng/ml(基準値0.1ng/ml以下)と高値を示していました。

直ちに新免疫療法を一部開始し、5月より経鼻チューブから全量投与しました。そして平成19年7月からは、誤飲性肺炎を避ける為の胃ろう造設を行いここから新免疫療法の全量が投与されるようになりました。

当院で測定した腫瘍マーカーは3ヶ月目のHCGは0.4以下(基準値0.7以下)と基準値以内に入っています。

また平成19年10月の採血でもこの値を示し続けています。

免疫能力を見てみますと、初診時はTNFαは4460pg/mlと活性化は認められるものの、IFNγとIL-12は非活性の状態でした。

これは長年の放射線や化学療法、そして脳圧を下げる為のプレドニンによるものと推察されます。NK細胞では細胞比率、活性化比率は共に非活性でしたが、NKT細胞は細胞比率が22%(10%以上が良好)、そして、活性化NKT細胞比率も14.8%(4.3%以上が良好)と高い値を示しております。

3ヶ月目にはIFNγが16.4IU/mlと活性化し、6ヶ月目も10.6IU/mlと活性化が認められましたが、IL-12の産生はいずれも非活性でした。またこの頃のNK細胞に関しては復が認められています。

患者様は誤飲性肺炎や甲状腺機能低下などの症状は認められるものの平成20年6月、放射線治療後12ヶ月目、HCGの値は0.6ng/mlと基準値以内を維持し続け、同月遠足に行くことも出来たとのことです。

その後、HCGは図1-1bに示すように、1.0、1.7、1.3、1.4 mIU/mlと基準値を超えて推移していますが、平成20年8月のMRIでは主治医より、再発所見は指摘できないとのことでした。

これまでの患者様の全経過を振り返りますと、3回の再発は治療後6ヶ月以内に再発していたとのことです。

放射線治療と新免疫療法(NITC)の併用治療は平成20年9月現在で17ヶ月目となり、最も長期の寛解が得られています。今後も慎重に経過観察を行なっていきます。

 

脳腫瘍 HCG産生脳腫瘍(胚細胞腫瘍) 症例 腫瘍マーカーおよび免疫検査の推移
脳腫瘍 HCG産生脳腫瘍 MRI比較画像① 新免疫療法によるがん免疫療法
脳腫瘍 HCG産生脳腫瘍 MRI比較画像② 新免疫療法によるがん免疫療法
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