患者様は東京都在住の女性で、2011年(平成23年)02月に総合病院にて右乳癌の温存手術を行いました。
その後、放射線治療を施行し、ホルモン療法のリュープリンを3か月に1回とノルバデックスを行いながら経過観察をしておりました。
しかし、2013年(平成25年)03月に総合病院にて右腋窩リンパ節の再発(10×8 mm)を指摘され、生検をしたところ陽性の診断となりました。
同月末、当院に来院されました。患者様の年齢は37歳です。
再発した腋窩リンパ節は手術で切除できるため、手術を行う必要があること。
新免疫療法(NITC)を行うならば、手術前から開始して手術後も再発予防として継続していく方針、もしくは手術を行ってから再発予防として行う方針が考えられると説明しました。
しかし、患者様は強く手術を拒否されました。
そこで、癌が進行して効果が期待できないようだったら直ちに手術を行うことを約束して頂いた上で新免疫療法を開始することになりました。
治療方針は、総合病院でホルモン療法を継続し定期的に画像検査を行いながら、新免疫療法(NITC)を行うというものです。
2013年(平成25年)04月(新免疫療法開始から約半月後)の免疫検査のサイトカインの値は、IFNγが53.0 IU/ml、IL-12が54.7 pg/mlと良好な値を示しておりました(図1:サイトカインの経過)
2013年05月初旬(1.5か月後)の超音波検査の専門医の所見は、右腋窩リンパ節に関して12×8×6mm大と扁平でわずかに残存しているリンパ門が観察されたことから悪性と診断されました。
2013年7月末(治療開始から4.2か月後)の超音波検査の専門医の所見は、右腋窩リンパ節に関して2か所指摘されました。
① 16×10×7mmでリンパ門は欠損しており内部に流入している拍動流が数行観察される。
② 10×8×5mmで流入する拍動流はリンパ門に限局しており、辺縁から流入するような拍動流はなく悪性所見は無い。
とのことで、前回と比較し若干の増大と診断されました。
2013年10月(6.7か月後)の免疫検査のサイトカインの値は、インターフェロンγが119 IU/ml、IL-12が101 pg/mlと高い値を示しています(図1)。
2013年11月(7.5か月後)の超音波検査の専門医の所見は、①16×11×8 mm(図2-1)、②10×8×6 mmで前回と比べ著変なしと診断されました。
リンパ節転移は大幅な増悪は無いものの、縮小傾向がみられないことから、同月より抗癌剤ゼローダ4T/日で2週投与・1週休み(低容量)を併用することにしました。
2014年(平成26年) 2月下旬(11.1か月後)の超音波検査の専門医の所見では、①17×10×8 mm(図2-2)、②11×8×7 mmでサイズの変化はないと診断されました。
2014年6月(14.4か月後)の超音波検査による所見図では①17×11×7mm、②12×8×8mmでサイズの変化はないと診断されました。
これを受けて抗癌剤ゼローダを4T/日から5T/日に増量しました。
2014年11月初旬、リンパ節転移がなかなか縮小傾向を示さないことから、手術を含めて治療方針を見直すことを提案しました。
その際、千葉県にある総合病院の乳腺科の専門医のセカンドオピニオンをうけるように手配しました。
2014年12月初旬、乳腺外科の専門医より併用している抗癌剤ゼローダをタキソール低容量の60mg/body、3週投与・1週休みに変更する案を頂いたことから、抗癌剤を変更することになりました。
2015年(平成27年)1月(22.2か月後)、乳腺科の専門医の元で行った超音波検査では腋窩リンパ節に関して、17.7×4.6 mm、10.6×4.9 mmのリンパ節は、増悪所見は指摘できず奏功を考えるとのことでした。
2015年(平成27年)6月(26.4か月後)、乳腺科の専門医の元で行ったPET-CT検査にてリンパ節転移が消失したと報告を受けました。
その時に行われた超音波検査では縮小はしているものの、まだ残っているとのことでした。
2015年(平成27年)7月中旬(新免疫療法開始から27.7か月後)の超音波検査の専門医の所見では、悪性所見はないと診断されました。
① リンパ門の保たれた20×6×8mm大のリンパ腺が見られ、流入する拍動流は遅く、リンパ門に沿ったもののみが確認できる(図2-3)。
② 近傍に12×6×4mm大の低エコー領域が存在する。前回まで指摘していたリンパ腺の可能性。拍動流は検出されない。
これは、超音波検査にてリンパ節転移が消失したことを示します。
その後も定期的に検査を行いましたが、再発等の異常所見はありませんでした。そして、新免疫療法の処方も段階的に減らしていきました。
2017年3月末の診察時、患者様から同年2月に行われた超音波検査でも異常所見は無かったと報告を受けました。
現在の処方は、1種類の医薬品と海由来の酵母のみとなっております。
今後も患者様の意向に可能な限り沿いながら、各医療機関と連携を取り続けて治療を進めていきたいと考えています。
2022年(令和4年)8月末においては、経過も良好で、海由来の酵母を継続されております。
2023年(令和5年)6月(10年3か月経過)においては、患者様ご本人だけではなく、感染症の予防を考えてご家族も海由来の酵母製品をお取りになっております。