【症例報告】 新免疫療法による がん免疫療法
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肺腺癌 ステージⅣ 手術不能 骨転移 放射線と抗癌剤治療後来院
当院治療6年間、イレッサ併用5年1ヶ月間

イレッサ、タルセバ、ガンマナイフ併用

患者様は、50代後半の女性で、平成13年9月に大学病院で、左肺腺癌と診断され、仙骨と右股関節の骨転移があるステージⅣ期であり、手術は不可能と主治医より伝えられ、肺の主病巣に60Gy、股関節に40Gyの放射線と、シスプラチン70mgとビノレルビン25mgの抗癌剤投与を受けました。

しかしながら、癌のサイズは不変であるが腫瘍マーカーCEAは上昇したため、効果が認められず中止となり、平成14年1月から新免疫療法(NITC)を開始しました。

腫瘍マーカーのCEAは、初診時には848 ng/ml(基準値5.0 ng/ml以下)と非常に高い値を示しておりました。
2ヶ月後の同年3月のCEA値は599 ng/mlと低下しました。この2ヶ月後の免疫能力は、Th1サイトカインのIFNγは5.3 IU/ml(10 IU/ml以上が活性化)、IL-12は7.8 pg/ml以下(7.8pg/ml以上が活性化)といずれも非活性でした。


しかし、全リンパ球数に対するNK細胞比率は17.2 %(11%以上が活性化)でかつ活性化NK細胞比率(NKP(+))は15%(4.3%以上が活性化)を示して良好でした。

また、NKT細胞比率は20.5%(10%以上が活性化)および活性化NKT細胞比率(NKTP(+))も10.7%(4.3%以上活性化)で良好でした。


新免疫療法における肺腺癌の能力別貢献度を検討しますと、Th1サイトカインの他には、活性化NK細胞比率(NKP(+))が高い貢献度を示すことが明らかになっております。


こちらの患者様は、Th1サイトカインはそれ以後もほとんど非活性状態が続いておりますが、NK細胞とNKT細胞が高い活性を示したので、CEAは130mg/ml台まで低下し続けていたのですが、10ヶ月経過した頃から横ばい状態でしたので、イレッサと新免疫療法の併用をおすすめしました。

 

腫瘍マーカーと免疫検査の経過

 

これらの併用により相乗効果が得られる可能性があること、すなわち、患者様の活性化NK細胞比率(NKP(+))が5.0%以上あるので、イレッサとの併用で有効性が高い可能性があることをご説明した上で、開始させて頂きました。

イレッサ併用開始後CEA値は著しく低下し、約1年間(当院治療開始から2年後)で131 ng/mlから5.7 ng/mlと改善しました。この頃からイレッサの副作用である瞼球のかゆみ、足の母趾のヒョウソウ、下痢(3~4回/日)が認められたので、イレッサを連日投与(通常量)から隔日投与(半量)に減量しました。


平成16年9月(治療開始から2年8か月後)、CEAが上昇傾向を示したため、2日間服薬し1日休む方法(3日2錠)に増量しました。


しかし、平成18年3月(治療開始から4年1か月後)CEAの値が、112ng/mlと再度上昇したため、イレッサを連日投与(通常量)に変更し、それにより、同年4月には66ng/mlに低下しましたが、平成18年8月(4年7か月後)にCEAが90.2 ng/ml、平成18年10月には216 ng/ml、平成18年11月には274 ng/mlと上昇しました。

 

左肺の主病変は大学病院の検査で大きな変化がなかったため、脳転移を疑い頭部のMRI検査をおこなったところ、3箇所の脳転移が見つかりました。

CEAが274 ng/mlに急上昇したこと、MRIにより脳転移が確認されたこと、新たな左肺内の転移病変が増大傾向を示していたことから、平成18年12月からイレッサ1錠、タルセバ1錠(イレッサの第2世代の新薬)を交互にのむ交代療法を開始しています。

 

これは、主病変はイレッサで抑え続け、転移病巣(脳転移、肺内転移)はタルセバで叩くこと狙った治療法です。

 

さらに、この脳転移は、局所的に照射することで副作用を抑えた放射線治療『ガンマナイフ』の適応があると判断し、平成18年12月、平成19年1月、そして平成19年4月と3回に分けて照射しました。

 

その結果、腫瘍マーカーは改善傾向を示し、脳転移は小さい病変を残すのみとなり平成19年6月のMRI検査では主治医より脳転移は極めて良好と判定されています。

 

その後、平成19年(2007年)7月のCT検査、XP検査にて主病変は変化が無いものの、左肺内の転移病変は増大(6か月間で35.3%増大:17mm)、二つの新たな新病変が出現したことが確認され、平成20年1月CT検査、XP検査(図6年後)では、主病変は変化が無いものの、新病変2か所がφ=5mm、φ=4mmとなりました。

 

この患者様は当院治療開始前に行われた標準療法の放射線と抗癌剤で効果が得られない状態から、新免疫療法単独で約10か月間治療を行いCEAが約1/6以下になりました。


その後、分子標的治療剤を患者様の状態にあわせて減量、増量を行う併用方法を用いることで、副作用を抑えながら可能な限り有効な期間を延ばすことを目指しました。

その結果、平成20年4月に残念ながらお亡くなりになられましたが、6年間の生活ができました。

レントゲン写真の比較1

 

レントゲン写真の比較2

レントゲン写真の比較3

レントゲン写真の比較4

 

 

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