患者様は東京都在住の66歳の男性です。
スキルス胃癌の診断がされた時期より,
約一年半前から、時折、胃のむかつきなど胃の調子が悪くなることがあり、
市販の胃薬を飲むことで、
その都度症状を抑えていました。
しかし、平成23年(2011年)の春ごろになると、
通勤中に吐き気を催すことも起こりはじめたことから、
胃カメラの検査を行った方が良いと考えられました。
それを契機に,
平成23年(2011年)6月中旬、
近隣の総合病院で胃の内視鏡検査を行いました。
この内視鏡検査で胃潰瘍と診断されたのと同時に、
念のために胃の生検も行われました。
胃生検の病理診断は、
胃粘膜表層と胃粘膜に印鑑細胞癌(スキルス胃癌)を含む
低分化腺癌細胞が認められると診断されました。
スキルス胃癌の診断です。
直ちに大学病院で治療を行うことになりました。
大学病院でのCT検査では、深達度はT3程度の疑いで、遠隔転移はなし。
超音波検査では、噴門部付近に10×8mm大他数個のリンパ節を認め、転移性腫脹の疑いと診断されました。
検査結果よりStageⅢAの疑いで、胃の全摘手術(D2)を行う治療方針となりました。
翌日、当院に来院して行った当院の専門医による超音波検査でも、
噴門部に全周性の壁肥厚(最大9mm厚)を認められ、
#2リンパ節の5個(9×8×8mm、13×8×7mm他)の転移があると確認されました。
手術の日まで1か月程度あることから、
それまでにスキルス胃癌を可能な限り改善させることを目的に
新免疫療法(NITC)と抗がん剤のTS-1:50 mg/日(低容量)を直ちに開始しました(同年6月中旬)。
また、手術前に免疫力を上げておくことにより、手術の合併症のリスクを軽減させることができると考えられます。
この時、患者様のサイトカインIL-12は20.0 pg/ml、IFNγは22.2 IU/mlと良好な値となっておりました。
同年7月中旬、予定通り胃の全摘手術が行われました。
ご家族から無事に手術が終了したこと、
主治医より胃の病巣が
柔らかかったと説明を受けたと連絡を頂きました。
摘出された胃の病理診断では、
①0-ⅡcⅢ型腫瘤が認められました。
②126個の摘出された全てのリンパ節には転移が認められませんでした。
③陥凹性病変は深さが粘膜固有層まで潰瘍性病変で悪性所見は認められませんでした。
以上より、スキルス胃癌のステージは、StageⅠA(sig pT1b(SM1)NOMO INF-a ly0 v0)の診断となりました。
患者様は、手術までの一か月間に新免疫療法と低濃度抗癌剤を行ったことから、
摘出されたリンパ節の転移が全て消失したのではないかと考えているとのことです。
平成24年(2012年)1月中旬、
手術から約半年後のCT検査にて、#8のリンパ節に再発の疑いを指摘されました。
再発するとは考えにくい位置のリンパ節でしたが、
念のため
大学病院にて翌月から低容量のCDDP(8mg/day)+5-FU(550mg/day):5日間連続投与で
1か月に1回の抗癌剤治療が開始されました。
新免疫療法(NITC)の方は免疫を上げるための医薬品の筋肉注射を追加しました。
平成24年(2012年)6月、 PET-CT検査にて、指摘されていたリンパ節に変化が無いことなどから、スキルス胃癌の再発は否定されました。
また、他にも再発の所見が無いことから抗がん剤治療は終了となりました。
そして、新免疫療法は『海由来の酵母』のみに減量しました。
大学病院で定期的に検査を続け、平成27年(2015年)07月のCT検査、平成29年(2017年)03月のCT検査でも再発の所見はなく通常の生活を送っております。
また、平成31年(2019年)4月末(当院治療開始から7年10か月後)においても患者様は再発も無く良好な経過を辿られております。
また、令和3年(2021年)11月(当院治療開始から10年5か月後)においても、患者様は主治医の先生と相談しながら、ご本人の希望で可能な限り体に負担の少ない形で必要な検査を継続し、良好な経過をたどられております。
そして、令和5年(2023年)7月においては、これまでの検査結果も良好で、スキルス胃がんの再発予防と感染症の予防を目的に『海由来の酵母』のみ続けておられます。