【症例報告】 新免疫療法によるがん免疫療法
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乳癌 多発骨転移 StageⅣ 健康診断で指摘 当院治療7年3か月経過

当院治療開始前から骨転移へ放射線
ホルモン療法・抗癌剤併用

患者様は、東京都在住の43歳の女性で、

2009年10初旬に健康診断で左乳房の腫瘤を指摘されました。

同月に都立病院にて、左C領域に3.3cmの腫瘤を認め、娘結節あり(同一乳房内の転移あり)、腋窩リンパ節転移あり、針生検にて、浸潤性乳管癌、ER(+)、PgR(+)、HER2(-)、NG1と診断されました。

また、肋骨痛があることから同年11月(図1-1)に骨シンチが行われ、多発骨転移が確認されました。

左乳癌のStageⅣの診断です。

都立病院にて、直ちに骨転移に対しての放射線治療(計17回)が開始されました。


同年12月初旬のMRI検査にて、左乳房に30 mm大腫瘤、左腋窩に10 mm大のリンパ節腫大、右第8肋骨後部、左第6肋骨前部に骨転移、特に、右第8肋骨では骨外に膨隆しているとのことでした。

また、上述の通り、ホルモン受容体はER(+)、PgR(+)であったため、ホルモン療法のリュープリンSRを3か月に1回、ノルバデックス20 mgを行うのと同時に、骨転移に対してゾメタを4週に1回行うことになりました。

 

患者様は2010年1月から新免疫療法を開始しました。

新免疫療法の処方は医薬品2種、筋肉注射1種、注射液の経口投与1種、食品4種とし、

都立病院での治療と併用しながら画像検査を定期的に行っていく方針と致しました。

この時、骨転移に対する放射線治療は17回の内15回まで行われていました。

腫瘍マーカーCEA(基準値5.0以下)は6.2 ng/ml、Ca15-3(基準値25以下)は44 U/mlと異常値を示しておりました。

免疫の状態を示すサイトカインのIL-12(7.8以上が良好)は7.8 pg/ml以下で、IFNγ(10以上が良好)は11.8 IU/mlとなっており、免疫能力は十分ではない状態でした。

2010年9月(当院治療開始から8か月後)、都立病院のCT検査では、

主病変は2×1.7 cm程で大きさに変化は認めない、肋骨転移は少し小さくなっているように見える。

新たな転移の出現はないとのことでした。この時期のCEAは4.4 ng/mlと基準値以下となり、Ca15-3は27.4 IU/mlとなり、改善傾向を維持しました。


2010年10月、患者様のご希望(経済的な理由)で新免疫療法の処方を半量まで減量することになりました。


2011年2月(13か月後)より医薬品を1種類削減し、残りを半量のまま継続する方針となりました。

この時期のCEAは3.8 ng/mlと基準値以下、Ca15-3は24.6 IU/mlと基準値以下となり、改善傾向を維持していました。


2011年6月(17か月後)、都立病院での骨シンチ(図1-2)では、右上位肋骨背側の骨転移は前回より淡くなっている。

左第8肋骨の骨転移も淡くなっており殆ど同定できない、前回(図1-1)に比べ改善している。

新たな骨転移を指摘できないと診断されました。

この時期のCEAは5.0 ng/ml、Ca15-3は26.6 IU/mlと上昇しました。


2011年9月(20か月後)より、患者様のご希望で食品を1種削減しました。


2011年10月(21か月後)の都立病院における超音波検査で、左乳癌は38×30×20 mmで前回に比べて大きくなっている。

すぐそばにDaughter Tumor(14×15×14 mm)を疑う病変があり、左腋窩リンパ節転移16×15×4 mmで3か所指摘されました。

また、同日に行われたCT検査でも増大を示す結果となりました。

この時期のCEAは7.2 ng/ml、Ca15-3は31.9 IU/mlと上昇しました。

この結果をうけて、都立病院ではホルモン療法のノルバデックスからアルミデックスに変更し、

新免疫療法では以前に削減していた医薬品1種類を再度処方することになりました

。しかし、2012年6月(29か月後)に手のしびれが発生したため、アルミデックスからアロマシンに変更されました。


2012年9月(32か月後)の都立病院でのCT検査では、左乳房C領域の乳癌は、14 mm大と縮小し、前回指摘されていた、娘結節も指摘できなくなっている。

治療効果と考える。左腋窩リンパ節転移も明らかな増大は認めないとのことでした。

この時期の腫瘍マーカーCEAは2.3 ng/ml、Ca15-3は24.8 IU/mlと共に基準値以下となっております。


また、この時、患者様のご希望(経済的な理由)により、医薬品1種類、食品1種類まで削減し、連日投与から隔日投与まで減量しました。

2013年4月(39か月後)免疫の状態を示すサイトカインIL-12は41.9 pg/ml、IFNγは19 IU/mlと良好な値を示していました。


2013年11月の都立病院でのCT検査では前回に比べさらに縮小し13 mm大になっている。

原発巣はさらに縮小している。新規転移はみられない。とのことでした。骨シンチ(図1-3)では肋骨への集積に著変は無く新たな骨転移を認めないとの診断でした。

 

治療経過は良好と考えられましたが、患者様は2014年1月から7月(48ヶ月~54か月後)まで新免疫療法を中断されました。

 

患者様は2014年7月から新免疫療法を再開されました。

処方は中断前と同じ医薬品1種類、食品1種の隔日投与としましたが、患者様は経済的な理由により、さらにこの半量まで減量したいとのことでした。

免疫の状態を示すサイトカインIL-12は11 pg/ml、IFNγは17.8 IU/mlと低下しておりました。


2014年8月(54.5か月後)の腫瘍マーカーCEAは3.1ng/mlで基準値以下でしたが、CA15-3は29.3IU/mlと基準値を上回りました。

また、新免疫療法中断中にアロマシン:1錠/日+リュープリン:1回/3ヶ月+ゾメタ:1回/3ヶ月は継続していたとのことでした。

また、視診により、主病変は出血のためか赤紫色を呈しているのを確認しました。


2014年12月(59か月後)当院の診察時、都立病院でPET検査およびエコー検査を行い少し増大気味と診断されたことから、ホルモン療法のアロマシンをフェマーラに変更したとの報告を受けました。


2015年5月(63.5か月後)、患者様は主病変がズキズキするとのことで、悪化が示唆されたことから、新免疫療法の食品を1種類追加した上で連日投与に戻し、筋肉注射(この月のみ)も行いました。


2015年7月、CTにて主病変は26×24 mmに増大、皮膚転移あるいは同一乳房内転移の疑いで約2 cmの病変も出現している。

肋骨転移は増大が疑われるが新たな骨転移は指摘できない。左腋窩に転移を疑うリンパ節はみられない。

また、肺転移、肝転移はなく、新たな転移は指摘できないとのことでした。

これを受けて、フェアストン3T/回に変更され、リュープリンは中止されました。


同年8月の当院では視診・触診により主病変(26×24 mm)と同一乳房内転移(20 mm大)が融合し雪だるまの様な状態であることを確認しました。


2015年10月(69か月後)、当院の触診にて主病変は小さく柔らかくなってきていることを確認しました。

この時のCEAは3.0 ng/mlと基準値以下に、Ca15-3は28.2 IU/mlと改善しました。


2016年4月(75か月後)に都立病院のエコー検査、CT検査では病変のサイズは大きな変化はないとのことでした。

当院の視診では、主病変が皮膚浸潤をしていることを確認しました。

この時の腫瘍マーカーCEAは9.9ng/ml、Ca15-3は34.5U/mlと上昇しました。


2016年5月、6月共に新免疫療法の筋肉注射を連続で行い、6月から都立病院で抗癌剤ゼローダを8T/日:3W(+)1W(-)で開始されました。同年9月当院の視診により、皮膚浸潤が改善していることを確認しました。


2016年11月(82か月後)、患者様は新免疫療法の医薬品1種および食品2種を3回/日を2回/日に減量したいと希望されました。


2017年1月、専門医の超音波検査では、不整形の腫瘤が42×36×19mmで、乳頭には近いが浸潤はしていないとの診断でした。


2017年5月(87か月後)、都立病院で同月に行われたエコー検査にて主病変は大きな変化はないが左腋窩リンパ節転移が増大気味と診断されたと報告を受けました。


患者様はお仕事が多忙であるにもかかわらず、演劇や歌手活動を精力的に行われております。患者様のご希望に可能な限り沿いながら、経過を診ていきたいと考えています。

 

 

乳癌骨転移の比較画像
腫瘍マーカーとサイトカインの経過
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